2010-07-18

22歳ちょいぶら男車窓にそびえる富士山に心打たれ「軽装にも程がある」姿でレッツラゴー

気をつけよう富士登山。
読み物としても面白かったので。

「やっぱりダメ。動けない」

 「富士登山に来たが暗くて道が分からない。寒くて動けない。怖いので助けて」

 山開き翌日の今月2日午後9時45分、静岡県御殿場市消防本部に男性の声で119番通報が入った。助けを求めたのは東京都中野区のパチンコ店員の男性(22)で、富士山の8合目(標高3250メートル)付近から携帯電話で通報してきていた。

 通報は救助を担当する富士宮市消防本部に転送され、同本部は「その場所から動かないように」と指示。山岳救助隊員4人がヘッドライトがついたヘルメット、防寒具といった装備を整えて救助に向かった。

 消防から通報を受けた県警富士宮署も男性の携帯電話に連絡を入れる。男性は「もう大丈夫ですから、自力でゆっくり下りています」と一度は言う。だが直後には「やっぱりだめだ。もう動けない」。

 119番通報から約2時間後、山岳救助隊員たちは6合目(2490メートル)付近にさしかかった。周囲は霧に覆われ、暗闇が広がっていた。そのとき、ヘッドライトの光が頼りない足取りで歩く人影をとらえた。

 「○○さんですか?(男性の実名)」

 隊員が声をかけると、「そうです」という弱々しい声が返ってきた。

 男性はTシャツの上にカジュアルな長袖のカッターシャツをはおり、ジーンズにスニーカーをはいただけの普段着姿。手ぶらで、防寒具はもちろんライト類も食料、飲料水すら用意していなかった。救助隊を指揮した坂井聖副隊長は「夏山だからと軽装で登る人は多いが、軽装にも程がある」とあぜんとした。

 標高などから計算された付近の気温はわずか2度。坂井副隊長は男性に防寒ジャンパーを手渡しながら、「こんなに寒い中、軽い気持ちで富士山に入っちゃだめだ」としかりつけた。男性は疲れ切った様子でささやいた。

 「はい。すみませんでした。ごめんなさい」


電車から見えた富士山に興奮、衝動的に

 男性にけがはなく、無事に下山した。そして、富士宮署で登山の経緯を語り始めたのだが…。

 「電車の窓から見えた富士山がきれいだったから登ろうと思った」

 男性は前日から行く先を決めずに、“ぶらり旅”をしていた。熱海で1泊して東海道線で西に向かう途中、車窓の中でそびえ立つ立つ富士山の姿に心を打たれ、富士駅で電車を飛び降りたというのだ。

 タクシーで5合目の登山口まで乗り付けたとき、時刻はすでに午後5時。男性は迷わず入山しひたすら頂上を目指した。夏山とはいえ、8合目を超えると雪がまだ残っている。氷に近い状態の雪の上を歩き、バランスを崩して転ぶこともあった。それでも男性は電車の車窓で見た富士山の頂を思い描きながら、必死に歩を進めた。

 9合5勺(3590メートル)付近に到着したとき、異変が起きる。頭痛とめまいが襲ってきた。これらは高山病の典型的な症状とされており、悪化すれば脱水症状や呼吸困難を引き起こし、意識を失う可能性もある。寒さの厳しい富士山で意識を失った場合、命を落とす危険がある。

 男性はこの段階でようやく、「気力がなくなり、下山を始めた」。119番通報して救助されたが、富士宮署員は「助かったのは非常に運が良かっただけだ。一歩間違えれば死ぬ可能性はいくらでもあった」と憤る。

(以下、略)

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